オリジナルアルバムとしては前作『secret』から1年10ヶ月ぶりとなる今作。ちょっと軽く計算してみたのだが、このインターバルで倖田來未が世に放った作品は、累計250万枚を超えたベストアルバムが2作、ライブDVDの金字塔を打ち立てたDVDが2作、そしてシングルが21作、これらの作品のほとんどが2,3種類の仕様別で発表されているのだが、それを合計すると、34作品!そのすべてが大ヒット!誰だ?CDが売れなくなったって言った奴!と、思わずツッコミたくもなるこの記録(もちろん彼女のこの状況は異例だが)。そんな氷河期とも言われる音楽シーンの中で唯一亜熱帯気候な倖田來未。以前インタビューした際に本人も公言していたが「飽きさせない」という難題を見事クリアーした結果がこの記録と状況である。どんだけスゲェんだ?あんた(笑)。
えぇ〜、そんな僕らに常に興奮と感動を与えてくれる倖田來未の5枚目となるオリジナルアルバムなんですが、これまた勝負作と言える一品。この緊張感すら伝わる、常に全力疾走感が彼女の人気を不動なモノにしていると思うのだが、今作は前のベスト2作にも劣らない内容の濃密さとクオリティの高さを感じさせてくれる。それこそ「これが売れなきゃアウト」ぐらいの心構えというか、覚悟がここにはある。勢いに乗るというよりは、状況に甘んじない人が生み出せる作品といった感じだ。市場的なニーズを考慮して出し過ぎないようにしていたブラックさを今作では遠慮なしに爆発させつつも、すでに発表済みのシングル曲のカラフルさ、曲を並べたときのストーリー性の心地良さでもって、実にポピュラリティ溢れるモノに昇華するこの巧さ。もうさすがとしか言いようがない。
で、その天文学的な記録も、傑作を形にする技術も、彼女の才能や努力、人柄が大いに関係しているモノだが、そのすべては超・進化型の歌声を中心に成立する。2005年9月に発表された初のベストアルバムを聴いたときも随分歌声の進化を感じさせるアーティストだなと思ったが、この1年10ヶ月での成長・進化ぶりは、2000年12月に発表されたデビューシングル『TAKE BACK』〜2005年9月に発表された『Promise/Star』の長い期間で感じさせたそれ以上だ。あれだけの数の楽曲を歌ってれば、そりゃそれなりに歌も上手くなるだろうという冷静な意見も頂きそうだが、そのすべての楽曲に対して嗜好を超えた誇りが高くある上であれだけの数の楽曲を歌っているからこその超・進化であり、超・人気である。消化試合に観客は真剣な声援を送りはしない。
ややこしいことをあれこれ書いてしまったが、このアルバムがいきなりのミリオンヒットを記録しているのは、それだけの必然性があってこそ、ということである。また最後に、喜怒哀楽をここまで感情豊かに響かせてくれる作品も珍しい、とも記しておきたい。倖田來未のこれまでのどのアルバムよりもそれは強く感じる。なるほど、それは、今作の魅力が彼女という人間の魅力とイコールと言うことか。今作に嘘はなし。アルバム『Black Cherry』は彼女自身である。

Black Cherry
歌はまぁ好き。でも…