やはり「ヘッド博士の世界塔」との比較論になりがちである。しかしこのアルバムがそれと大きく違うのは、現実から完全に目をそらしているところだ。言うなれば、優れたオタクっぽさ、優れた時代錯誤性。ロックの復権叫ばれる90年代頭だからこそ、欧州のポップスと妥協しない職人芸は光る。
どちらも無数のサンプリング音源から成立しているが、「ヘッド〜」に比べればこちらはかなり整然としている。音という音が絶妙に絡み合い、別な世界が出来上がっている。決して傷付かない、オシャレな虚構の世界。それは決して同時代的だとは言えないが、非常に魅力的である。しかし我々はその全貌を把握することが不可能で、表層を旅することしかできない。これはどこか雑然とした「ヘッド〜」にはなかった感覚である。そしてこの点において、本作の方がより優れたアルバムだと言うことができると思う。
一歩間違えばすべてが無意味になってしまいそうな、そんな絶妙なバランスのもとにある。オシャレとはそんなものだろうか。とりあえず全体像を把握しようとして聴くのではなく、流れてくる音を受けとめるべきアルバムである。

Best of 1991