「僕の小規模な失敗」のカスタマーレビュー
実は成功物語
主人公は小規模な失敗は確かにしていますがその裏でちゃんと成功
〜大規模ではないかもしれませんが中規模には〜しています。
学校の無理解の中、0から柔道部を立ち上げ初心者に稽古を付け
大会で好成績に持って行く、そして生徒会長に立候補し
それによって大学への推薦も勝ち取るなんてあたりは
描きようによっては熱血マンガです。
主人公がいかに行動力と指導力があるかわかります。
それがこのマンガではあえて愚行として描かれる。
マンガも次第に採用されるようになり、友達にも恵まれ、
ストーカー扱いされても粘って好きな女の子をものにする、
そして結婚したら妻が働いて家計を助けてくれる。マンガの道はまだ険しいとは言え
主人公が最後の方で言っているように「むしろ幸せな人生」でしょう。
これをダメ人間失敗物語のように偽装して描いたのこそ作者の企みなのでしょう。
まあ、実際そうした中規模な成功話を成功と思えないというのも
作者のある程度の実感ではあるのでしょうが、それも、この程度で満足できるか
という作者の向上心ではないかとさえ思えます。
これは新しいタイプの漫画かもしれません。一読をお薦めします
重くて 深くて 軽くて バカで 小規模で
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
調べてみるとこの著者は僕(1976年生)と全く同じ年齢らしい。
例えば中島らもにあこがれて酒をがぶ飲みするあたり(p18)なんかは、昔自分もやってみた。
結局若者たちは、中島らもの「今夜、すべてのバーで」とか読んで、
ウイスキーをカッパカッパと飲みたくなるのだ。
そんな同世代感たっぷりのストーリーの中で、
同棲をはじめて彼女の寝顔を見ながら就職を決めるシーン(p136)とか、
ちょっと本気で泣けてきた。
確かに仕事しなきゃ缶詰だって食べられないわけで、
男が(女と読み替えても可)自分以外の誰かを養うことになれば、
そのために缶詰を買うお金を稼いでこなきゃいけないわけなのである。
いつまでも軽やかに生きていたいけれど、
そういう男(女と読み替えても可)の覚悟っていうのが、なんというか、
大人になるためのステップ・・?必要なハードル・・?とかいうと、
全てが軽くなってしまうけれど、とにかくそういう種類のもののひとつが、
同棲とか結婚とか出産とか新居だとかの、
「逃げ道のなさ」だということを思い出して、僕の心にドーンときました。
重くて、深くて、軽くて、バカで、小規模で、悲しくて、
それでいて、良い本です。ぜひどーぞ。
読者は騙されてる、かも…?
54人中、40人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
うーん…。本当にこの作者が自分で誇張するほど「ダメ人間」かどうかは正直言って疑問。
確かに話の大筋を見ると、目も当てられないほどに社会不適応者っぽいのだけど、ときどき
とんでもない行動力を見せ付けている。まず、定時制高校で自ら柔道部を設立
するってくだりは、「おいおい、そんな図抜けて能動的なことが出来る奴なのかよ!?」
というギャップを大いに感じた。作品中には触れられていないが、当然中学時代にも
柔道をやっていたということであり、しかも初心者に柔道を指導できるほどレベルが高い。
そういう人ははっきり言って「内向的」でも「非社会的」でもありません。
次に、ホームレスの人に食い物やお酒を驕ってどんちゃん騒ぎをやってしまうくだり。
…どんだけ勇気があるんだよ!並大抵の行動力じゃないだろ!
あと、一応ちゃんと同窓会とかそういうものにはキチンと出席していたり、何だかんだ
言って友達がすごく多いこと。なんだよ。結構フツーに社交的で人付き合いできるんじゃん。
最後に、彼女をゲットするくだり。まあかなりの紆余曲折とはいえるけど、結果的には
「すごくカワイイ女の子と付き合って、結婚する」という栄冠を勝ち得ている。
鬱々とした独白とストーリーの影に、実は「オレって別にそこまで異常でもバカでもない
よ。よく読めばそれが分かるよ」というメッセージが見え隠れしている。それに、絵は
かなりウマイ方。けっして「ヘタウマ」とかの部類に入るものではなく、普通に上手。
絵にすごく「ヤル気」が溢れている。…これらが自分の神経をけっこう逆撫でした。
なんか、実は狡猾な作者に騙されている気がしちゃうんだよなー…。
あまりにネガティブ、でも勇気がでる。
4人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
精神的な葛藤がとてもよく描かれている作品でした。
孤独の寂しさ、周囲から取り残されることの焦燥感、異性への鬱屈した思い。どれも多かれ少なかれ誰もが抱いているものだと思いますが、ここまでストレートに表現できるのは凄いです、自分にとっても共感できるような部分があまりに多いので、一気に読んでしまいました。
それにしてもこの主人公、ネガティブなようでかなり行動力があります。どんなに追い詰められてもひきこもらずにちゃんと社会と、自分と向き合っている、それゆえのネガティブのように思えます。どんなに辛くても後ろ向きな考えにとらわれてしまっても、常に前進していこうという思いはいつでも持っている、根の強い人間です。そんなところに慰められ、時に勇気をもらえる。ただの鬱漫画かと思えば全く逆でした。現代社会に疲れた人たちの抗鬱薬のような作品です。
社会性のない人間にとっての青春とはなにか
2人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
自分は著者と完全な同世代で、性格的にも似た傾向があるので、心に突き刺さるところ、同感するところなどの連続でした。作品としては、若かったころの著者の、失敗多き「自分」探しの旅の物語。テーマとしては、暗くなりがち。いつも困ったような主人公の眼差しや、少し屈んだ姿勢などに、まったく自信を持てなかった頃の著者の苦悩と、自分の現状と同世代の人間の生き様などを、どうしても比べてしまうことによって生まれる葛藤との戦いが素直に描かれる。
しかし、絵柄は結構コミカルだし、女の子を可愛く描くのが上手いので、読後にどんよりと暗〜い気持ちにさせられるというよりも、これだけ開け透けに心の奥底を描いてくれた事に対する「よく描いてくれた」という気持ちが生まれる。本当の「自分」を見つけきれない状態でも、どうにかして生きていかなければならない、現代の若い人へ、それでも「がんばろうや」と優しく声をかけてあげたくなるような作品である。
豊かな不自由の少ない時代に、尻をあまり叩かれずに育った人間は、自分の生き方を全て自ら開拓して行かねばならない。これは、なかなか大変なのである。