そして知るという行為は、実は人生においては圧倒的かつ絶対的な行為だ。
名作といわれる分厚い推理小説の犯人を読む前に知る。
実は同級生が自分を激しく憎んでいるという事を知る。
実は自分の両親が実の両親ではないと知る。
いずれも、知った後は、知る前と同じ人生は送れない。
知るという行為が、決定的にその人の人生を左右したのである。
ところが、読んで知った後に全く何も残らないマンガがある。
それがこの「ニニンがシノブ伝」だ。
これといった内容もなければ、意外な展開もない。
複雑な構成もなければ、突出した人物造形もない。
早く先を読みたいと思わせる求心力もなければ、画力が特に優れている訳でもない。
食べ物にたとえると、栄養価のない、こんにゃくか寒天といったところだろう。
まるで、散々にけなしているようだが、実は全然そうではない。
創作の世界は常に「オリジナリティ」「個性」という幻影を突きつけられている。
結果、借り物のオリジナリティ、借り物の個性で自分を演出しようという
本末転倒なマンガが増えている。
そういったマンガには、読んだ後には何も残らないが、
ページをめくっている間だけは楽しめる、
「ニニンがシノブ伝」を、少しは見習ってほしい。
マンガの楽しさの本質が、この作品には満ちているのだ。
いや、読んだ後に何も残らないんだけどね。

食べ物にたとえると「こんにゃく」