本書は、ヒュー・マッケイら著、田畑暁生訳『入門 情報社会の社会科学』NTT出版、2003に、技術決定論に対する批判的文献として引用してあったので、読んでみた。著者、フランク・ウェブスターは英国の社会学者であるが、邦訳は本書が初めてのよう。著者は、情報社会論やその周辺にに位置づけられていた説や著作を、痛烈に批判し、検討を行なっている。斬新な情報通信技術の開発や発展と社会の変革に光を当てることに首を突っ込んでいる読者にとっては、冷や水を浴びせられる内容かもしれない。
しかし、米国発の、劇的な技術と劇的な理論に衝撃を受けるのが楽しみになってしまった日本人にとって、このような研究の邦訳を手にできることはありがたい。できれば、著者が読んでみよ、と述べている三人の研究者である、ハーバート・シラー、ユルゲン・ハーバマス、アンソニー・ギデンズらの文献にも目を通してみたいもの。とりわけ、情報領域でものをいうのは、企業の行動、市場原理、権力の不平等性である点を指摘するシラーの邦訳がないのは残念。
なぜ現代において情報が重要なのか、どのように社会的、経済的、政治的関係に影響を与えるのか、驚くほど多様な意見があり、共通の関心領域を検討したい、というのが執筆の動機だ(pp.9-14)。登場する論点の一つは、新しい社会が来たとする論者の使いたがる「情報社会」概念、もう一つは、既存の関係との連続性を「情報化」という用語に込めて使おうとする論者である。本書全体は、「情報社会」概念自体への懐疑的視点で貫徹。
現代社会では情報がキーワードとなっているが、この性質や意味が論者の数ほどあって合意形成がなされていないという観点で、情報の定義を質と量の面から、追求し始める。
目次、章節。索引あり。原著参考文献と訳者の作った邦訳文献リストあり。ひもなし。

情報の裏に何らかの動機が・・・(p.200)
「情報社会」を読む