本書のテーマは「時間旅行」であると著者は述べている。ただしこの時間旅行はタイムマシンに乗って時間を移動するのではなく、ある種の精神的な努力によって過去の出来事を追体験するというものであるが。これによって主人公は知られざる人類の過去を洞察し、そこに関わった「大いなる古きものども」の存在に気付くようになる。
というのが物語の後半の筋だが、僕自身がこの本の主眼と見ているのは長い前半部分である。そこでは長寿についての著者の考えが充分に展開されている。即ち、肉体の瑞々しさはかなりの部分まで意志が前向きである事に負っている。そして意志が前向きであるためには、我々は「開かれた未来」を信じていなければならない。即ち、生は根本的に善いものであると感じさせてくれる「新しさ」の流入がなければならないのだ。我々が「老け込む」のは、年をとるにつれて意識が狭まり、次第に新しさを感じる度合いが減じていく事による。従って、もし意識を拡大する方法が見つかれば、「新しさ」の流入が途絶える事はなく、それはとりもなおさず長寿の秘訣を発見した事になるのだ。
身近な「老人」を観察すれば、この説の正しさが分かるだろう。彼らの中には肉体的に少なくとも中年には匹敵する者がいるが、そういう人は大概、頑張ろうとする意志が抜きん出て強く、態度が前向きである。

肉体と意志の関わりについての考察
期待はずれ
SF作