「ベンスン殺人事件 (創元推理文庫 103-1)」のカスタマーレビュー
今読んでの読みどころ
探偵のウンチクがわずらわしいと思えるときもありますが、刊行から半世紀以上経過した
今になって読んでも、それなりに楽しめます。
物語の終盤に探偵はそれぞれの容疑者の不利な点を次々に明らかにする一方、犯人が
見つかったと喜ぶ警察を尻目にその片端から犯人であることを否定していきます。
ここで作者が示したかったことは、物的、状況証拠から提示される犯人がいかに
曖昧であるかという点と、翻弄される警察陣の対比としての神のごとき名探偵の姿かと
思います。
作者が意図したかは分かりませんが、これはテクスト(=証拠)の解釈について、
ミステリーが前提とする一義性を否定するもので、ミステリーについての根源的な
問いにつながるのではないでしょうか?
一方、訳文の漢字/ひらがなの使い方が、私の慣れた文章と大分異なるようで、読み
にくかったため星は一つマイナスとしました。
現代長編ミステリの幕開け
4人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ヴァン・ダインの記念すべき処女作。本作以前にも長編ミステリは存在したが、現代風の骨格を持った長編ミステリとしては嚆矢と言える。それまでのミステリでは当然のごとく"物的証拠"を重視していたが、本作と次作の「カナリア」では"心理的証拠"を前面に押し出しているのが特徴。
作中で、「ウサギが走っているのを見た10人の大人が白いと言い、1人の子供が黒いと言ったら、どちらを信じる」と聞かれたヴァンスが「僕は10人の眼の悪い大人も、眼の良い子供も信じない。信じるのは心理的証拠だけだ」と答えるのが真骨頂。
また、結末近くで、容疑者の所を次々と廻り、一見犯行不可能な人物が実際には物理的には犯行が可能だったことを示す。しかし、皆、"心理的"には犯人ではないと切って捨てる。そして、最後に訪れた人物(検事マーカムの友人でもある)に対しても、そのアリバイを崩し、"心理的"にも犯人である事を告げる。ヴァン・ダインから国外ミステリに入った読者には痺れる展開である。
心理的証拠を前面に出し、現代ミステリの骨格を創った記念碑的作品。
心理探偵小説
16人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
謎を従来の物的証拠から解明するのではなく
心理面から解決しようとして提唱された
ヴァン・ダインの処女作
最も友達にしたくない探偵と呼ばれるファイロ・ヴァンスが
株式仲買人の死の謎に迫ります
記念すべきヴァン・ダイン第一作
19人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「グリーン家殺人事件」・「僧正殺人事件」が有名なヴァン・ダインですが,「ベンスン殺人事件」は彼の記念すべき第一作です.プロットでは「グリーン」・「僧正」に一歩譲りますが,主人公ヴァンスの心理分析の醍醐味,読み応えのある重厚な文体,そして著者の博学ぶりが伺えるペダントリーは一級品です.これからヴァンス・シリーズを読まれる方,始めに「ベンスン」をお薦めします.単品としても一級品ですし,登場人物の性格もわかって他のヴァンス作品をより楽しめますよ.