ルネサンス美術に造詣の深い若桑氏らしく、いわゆる聖母子像との関連づけもきちんと為されており、興味深い。大体国家が「母性」だの「家族」だの言い出すとろくなことがない。放置しておけば、「婦人は同僚でもなければ
愛人でもなく、ただ母たるのみ」などと言い出しかねない。
筆者が炙り出す滑稽にして哀れで不気味な「女性像」は、過去の我々の檻であると同時に現在の我々の檻である。女権拡張運動をやっていた人々が絡めとられてゆく姿がとても哀しい。今の私たちだって、うっかり嵌りそうな罠ではないか。
殺す側に荷担しない為に。私的な大切な人間関係を「家族制度」「国家」に絡めとられない為に。無自覚に暴力を振るわない為に。
無自覚のままに大量のグラフィックイメージやコピーに晒されている現代、判断力を失わない為に必読といえる。極めて良書。

視覚情報の暴力