無節操な日本人 (ちくま新書)

筑摩書房 [新書]
(2000-06)
EAN:9784480058508
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「無節操な日本人 (ちくま新書)」のカスタマーレビュー

日本人と他民族の本当の違い
2人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 日本人論を取り扱った図書は数あれど、いずれも核心をつけずにいる印象は否めない。それは多民族との違いについては「文化相対主義」が誤って適用されるため、力による己の正当化、異質に対する不寛容、といった共通の汚点については見えてこないからだ。
 それだけに本書は、先天的な相違による民族ごとの対比を排し「行動原理主義を持たない文明社会」のみに日本の特異性を集約した点で、画期的といえる。しかもその原因を、巨大文明を持つ大陸国家に対し、隔絶しすぎず近接しすぎないという、世界的に見ても稀有な日本の位置関係に求めているだけに、信憑性も極めて高い。
 鎖国を布いた徳川幕府なども、日本が社会的に行動原理主義を持たないと自覚し、諸外国からの「隔絶」を試みたのかもしれない。その意味では、島原・天草などに分布した「隠れキリシタン」こそが、日本にあって行動原理主義を具えた唯一の例外に相違ない。また、戦後の経済発展が完成し、政策の転換について論じるべき大事な時期に、所謂「公害問題」といった即物的な「代償」に気をとられすぎ、体制の刷新を忘れ去ったあたりも、情緒原理主義の社会らしい対応といえた。このように考えを廻らせられることからも、本書の視点は面白い。
 しかし、敢えて苦言を呈すなら「未熟な甘え」を語る際に、著者自身の世代・すなわち団塊世代のことを棚に上げるあたりは、いかがなものだろうか。また別章では、グローバル企業のこと褒めそやしているが、これもいただけない。なぜなら、そういった企業の経営者こそ「未熟な甘え」から末端労働者を奴隷のごとくこき使い、ワーキングプアの問題を引き起こしている張本人なのだから。そういったマイナス点を差し引き、評価は星4つで。
指導的立場にある人たちの無責任さの土壌を剔抉
11人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 本書に対して「深みがない日本人論の典型」というレビューが提出されている。日本人の呪術的思考を批判する著者が、超能力に肯定的なテレビ番組において「批判する物理学者の意見はカットされている」と指摘するのに対し、レビューアーは、反オカルトの立場をとる大槻義彦氏が“TVに出まくっている”ことを無視するのは、著者が日本人に特有と指摘する〈情緒原理主義〉の欠点に、著者自身が陥っている一例、と批判されている。しかしこれは ― 先んずるレビューアーには失礼ながら ― あまりに浅薄な見方だ。大槻氏は“なんでもプラズマ”に還元するいささかステロタイプな論者であり、つまり番組にとって真の危険のない論者だからこそ、彼ばかりが起用されるのだ。

 本書は、ここ数年の、各界での責任ある場にいた人々があまりにも無責任でいることについて、その精神風土を見事に抉り出している。〈情緒原理主義〉と〈行動原理主義〉という明快な枠組の提示がかえって「深み」の欠如と思われたのではないかと思うが、一つの有効な思考モデルだと思う。「日本人に限らない「無節操さ」」ではなく、まさに「日本固有の〈無節操さ〉」の土壌を考えるのに格好の一冊だ。

深みがない日本人論の典型
20人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
日本人論としては最も売れたであろうものは多分、イザヤ・ベンダサン(山元七平)の『日本人とユダヤ人』であろう。しかしこれは浅見定雄が書いた『にせユダヤ人と日本人』で完膚なきまでに反論されている。『日本人とユダヤ人』の失敗の原因は著者の無知もさることながら、日本人の特性について、例外的な思考ができなかった点にある。例えば日本人は水と安全をただだと思っている、という有名な指摘でも、著者は「日本人以外でも水をただだと思っているとう国民はいないだろうか。」とか「日本でも水を大切だと思っているようなケース(e.g.水争い)はないだろうか。」ということに思いが至らない。

この『無節操な日本人』は『日本人とユダヤ人』と同様の失敗をしている。極めてシンプルな例だと、今日の日本社会の「呪術」信仰を指摘するくだりで、「この種の(超能力)番組を批判する物理学者の意見はカットされている。」とあるが、大槻教授がTVに出まくっていることは全く触れない。このような「突っ込み」が本書の全編に渡る歴史的な事例にできてしまう。

「情緒原理主義者の日本人は『原則-例外思考』ができないので、ひとたびある行動原理に情緒的に同調し、それを聖化すると驚くほど融通がきかなくなる傾向にある。」との指摘は本書自身が証明していると言える。

しかし日本人に限らない「無節操」さを指摘したものとして、本書の意味はあると思う。

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