日本人論を取り扱った図書は数あれど、いずれも核心をつけずにいる印象は否めない。それは多民族との違いについては「文化相対主義」が誤って適用されるため、力による己の正当化、異質に対する不寛容、といった共通の汚点については見えてこないからだ。
それだけに本書は、先天的な相違による民族ごとの対比を排し「行動原理主義を持たない文明社会」のみに日本の特異性を集約した点で、画期的といえる。しかもその原因を、巨大文明を持つ大陸国家に対し、隔絶しすぎず近接しすぎないという、世界的に見ても稀有な日本の位置関係に求めているだけに、信憑性も極めて高い。
鎖国を布いた徳川幕府なども、日本が社会的に行動原理主義を持たないと自覚し、諸外国からの「隔絶」を試みたのかもしれない。その意味では、島原・天草などに分布した「隠れキリシタン」こそが、日本にあって行動原理主義を具えた唯一の例外に相違ない。また、戦後の経済発展が完成し、政策の転換について論じるべき大事な時期に、所謂「公害問題」といった即物的な「代償」に気をとられすぎ、体制の刷新を忘れ去ったあたりも、情緒原理主義の社会らしい対応といえた。このように考えを廻らせられることからも、本書の視点は面白い。
しかし、敢えて苦言を呈すなら「未熟な甘え」を語る際に、著者自身の世代・すなわち団塊世代のことを棚に上げるあたりは、いかがなものだろうか。また別章では、グローバル企業のこと褒めそやしているが、これもいただけない。なぜなら、そういった企業の経営者こそ「未熟な甘え」から末端労働者を奴隷のごとくこき使い、ワーキングプアの問題を引き起こしている張本人なのだから。そういったマイナス点を差し引き、評価は星4つで。

日本人と他民族の本当の違い
深みがない日本人論の典型