全編、ちょっと変な人の表層的な紹介にしかなっていない。
一つ、例を挙げれば最初の"数列畸人「ナンバーズ」の謎を追え!"
ここでは、道路にチョークで数列をダーっと書く人を紹介しているが、
彼はなぜ地面に数列を書くのか、数列は何を意味しているのか、そういった質問をしても
彼の返したノーベルだの、イヤリングだのの、単純な言葉のレベルで立ち往生するだけで
そこから先に話を進めようとせず、ここにこんな人がいた、その人はこんなことをしていた、的な記述にとどまっている。
全編がこんな調子か、それ以下の当たり障りの無いドキュメンタリーもどきで埋め尽くされている。
知りたいのは奇矯な行動が彼らにとってどう位置づけられているのか、だ。
彼らにとってその行動は何を意味しているのか、どういった秩序に基づいてそれを行う理由が
できていったのか、そういった独特の論理性こそが著者や私達に、
畸人に対するある種の憧れを抱かせる原動力なのに。
(p325の正しい畸人はエネルギーに溢れている云々というくだりを見る限り、
著者はこのことに気づいているはずなんだが)
もっと突っ込んで質問するなり、丹念に行動を追うなりして
彼らの美学、宇宙観をきちんと描き出すべきだ。
追記
内容紹介に偽りあり。
"まったく新しい数列を用いてノーベル賞をめざすオヤジ"、とあるが
彼は「世界一でなくては」、「ノーベル」とつぶやいていただけで、
実際に目指しているかどうかの言質をとっていない。
また、"工事現場で惑星を作っている“ラム王国の王子”"については
「惑星を作っている」と本人から聞いただけで、その言葉が字面どおりのものを指しているのか、それとも他の行動を示すある種の符丁なのかどうか、そういうことを尋ねてもいないし、そもそも実際にその現場に行って、見たわけでもない。
さらに情けないのが彼と会話した時のシチュエーションで、著者はべつに取材に行ってきたわけではないのだ。もともと彼、“王子”は著者の仕事場のお客としてきていただけで、後に取材に行くことも無く、きちんとしたインタビューも取らずにその時の彼との応対、および同僚の話のみを元に記事にしているのだ。
こんなお粗末な代物を「綿密にフィールドワーク」と称するのは不穏等極まりない。

宇宙の一歩外だけでは…
現代畸人研究の集大成