日本における東アジア共同体構想の研究団体である東アジア共同体評議会が出した政策報告書を「一般読者向けにリライトしたもの」(p.4)であり、東アジア共同体についての概説書となることを意図して書かれたもの。執筆者の顔ぶれから分かるように、本書で扱われる分野は文化から経済、安全保障と幅広く、様々な視点から「東アジア共同体」というものを眺めることができる。
ただ、構想の歴史的背景を概観する第1章と今後の課題を述べている最後の第6章を除くと、その内容は必ずしも「概説書」であるとはいえない。本書のもとになった報告書の性質を考えれば、議論が特定の一部に集中して専門的になることはやむを得ないだろうが、「概説書」を作ろうとした意図から検討を加えるならば、その目的を十分に発揮したものとは言えない。2〜5章では分析枠組みが異なるため、東アジア共同体について執筆者間はどのような共通理解のもとで各章が書かれたかが読み取れない。理解のためのピースは散りばめられているので、それを統合して東アジア共同体の総体的な理解をするのは、読者に委ねられていると言えよう。

東アジア共同体