現代民主主義の病理―戦後日本をどう見るか (NHKブックス)

日本放送出版協会 [-]
(1997-01)
EAN:9784140017883
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コメント: ペーW端に折れ跡A3箇所ほど。マーカーの線引き、数ヶ所あり。
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コメント: 1997年 カバー・帯付 157頁に僅かに破れ(文字にはかからず)。若干焼け、煤け。天地小口に極僅かに茶点。線引き等無し。

「現代民主主義の病理―戦後日本をどう見るか (NHKブックス)」のカスタマーレビュー

現代民主主義の病理
13人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 本書の“序 無魂無才の不幸―日本人の精神はどこへ”において、佐伯氏は“マス・メディア、ジャーナリズムといった広い意味での言論知識層における言論の乱れ、時には無責任、あるいは確信の喪失こそが、現代の日本の漂流の重要な原因ではないか、と考えたいのである。”と言う。

“1 戦後五十年、アメリカ化の五十年”では、大衆消費社会の創出、アメリカニズムという現代の病、などが書かれている。

“2 「西欧文明」と日本の知識人たち―戦後思想と丸山真男”では、文明の衝突、丸山眞男が無視したもの、などが書かれている。

“3 デモクラシーは「責任」をとれるか―不透明な時代の責任論”では、エリーティズム対ポピュリズム、無責任な責任論、などが書かれている。

“4 サブカルチャー化する現代”では、オウムに破壊される市民文化の欺瞞、世論に破壊されるデモクラシー、などが書かれている。

“5 「市民社会」の崩壊”では、信頼の上に成り立つ市場経済、市民社会のルサンチマン、などが書かれている。

“終 信頼と民主主義”では、エリート文化の精神構造、近代化のバラドックス、などが書かれている。
 
 民主主義というものに対しての批判を私は聞くことがある。だけども、民主主義を無くせと主張する人は聞いた事はない。だから思うに、民主主義というのは疑念の中にあって平衡がとれる制度なのかなと思ったりする。
 
 そして佐伯氏は「デモクラシーはいくらでも無責任体制になりうる」のだという。民主主義には負の面も考えうるわけだ。そうした事を考えさせられる本なのだと思う。
分析としては面白く、処方箋としては駄目
5人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 本書は、主として思想史に関して造詣の深い研究者である佐伯啓思が、1995-97年にかけて『発言者』等の雑誌に発表した論考をまとめた、戦後民主主義批判の書である。本書では、戦後日本におけるアメリカニズムの無批判な受容、デモクラシーの「もたらす」無責任体制、サブカルチャー化した世論によるデモクラシーの破壊等が批判的に検討され、全体の流れとしてはそれなりに説得的な論旨が展開されている。デモクラシーの病理の分析としては、確かにためになる。
 しかし問題点がいくつかあると思う。一つは、デモクラシーにおける責任論の困難という指摘自体は正しいにせよ、地位や職務に伴う「段階の差」を責任論に設ければ、ある程度まで責任は問えるのではないか。第二に、国家意識と対話的公共性との関係(両者は関連しつつもズレがある)をつきつめないまま、丸山真男の議会制民主主義論を安易に断罪しているように思われる。第三に、佐伯は丸山とは違った形で「外在的」に現代日本を批判しているようにも見える。第四に、「信頼」の重要性という指摘自体は良いとして、それを伝統や国家意識や共有価値に求めるのは飛躍がある。現代社会で伝統を安易に持ち出すのは楽天的すぎるし、どういう形の国家意識をどういう仕方で持たせるのかは説かれていないし、共有価値も衝突と妥協の中で徐々に形成されるものではないのか。最後に私見では、全体主義とは民主主義が病理に陥ったときに、安易に伝統や国家意識を持ち出すことから生じると思うのだが、どうだろうか。著者は、近代を性急に批判するあまり、前近代を美化しすぎているように思う。
民主主義と全体主義は対立概念ではない
46人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私は中西輝政、佐伯啓思の二氏を現代日本の賢者であると思っている。本書の一節を引用しよう。

「自己責任と市場経済化は、まさにアダム・スミスが述べたように、個人的利益の追求をもっぱら是とし、結果として、ますます国家的、公共的見地などというものは顧られなくなる。そしてこれらの現状こそ、(中略)戦後民主主義と産業主義の延長上に出現したわれわれの社会の姿にほかならないのだとすれば、戦後民主主義と産業主義の進展こそが、民主主義を掘り崩しつつあると言わざるを得ないのである」 「たとえば、ある国が、総力戦により開戦を行うというような決定的な決断を国民投票によって行えば、その結果として、国民の大多数が戦死し、国家が滅亡の危機にさらされようとかまわない、(中略)明らかに、これはひとつの全体主義である」 <引用終了>

民主主義に西洋本家のそれと借り物で身につかない日本のものがあるわけではない。民主主義以前に、国家や公共社会に対する義務の感覚がしっかりと保持されているかどうかが、民主主義という統治形態が意味を持つかどうかを決定する。民衆の意志を絶対化する体の民主主義を追及して行けば、民主主義という全体主義が出現することを著者は述べている。

民主主義政体以外に日本が取り得る道はないであろう。それを機能させるものは、個人の自由の主張ではなく、国家や公共への義務の感覚であり、歴史や文化の再把握の行為なのである。 現在のわれわれの問題を原理的に考えさせてくれる書。

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