窯変 源氏物語〈1〉

中央公論社 [文庫]
(1995-11)
EAN:9784122024748
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「窯変 源氏物語〈1〉」のカスタマーレビュー

橋本治の文体
16人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私はこの人の書く文章を、特に優れた日本語だとは思わない。一行の中に幾重にも言葉を重ねる。それがあたかも平安時代の貴族の衣装と重ね合わせられ、『源氏物語』の装飾としては成功しているかなと思う(しかしクドいですよ。飽きずについて来られるなら、全巻読み通せるはず)。
光源氏の一人称という新しい切り込み方はなるほど新鮮であるが、文庫のカバーに作者近影があるのがどうにも余計である。どうしても作家橋本治が言ったり思ったりしているように感じられて、それで「美とは力である!!」なんて豪語されると、気分がぶち壊される。作家は姿を隠すべきだ。特にこの手の一人称物の場合は。
描写力に長けている人なので、見取り図くらいにしか思えなかった後宮の殿舎を、あたかも実際源氏の君といっしょに歩いているような気にさせてくれる。
昇華、そして供養。
23人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
フランス小説を書くつもりで、源氏物語を書いてみたらこうなった──らしいです。

中に挟まれたモノクロの外国人のモデルさんの写真が綺麗。
表面的な事だけを見るとそんな感じですね。
では、中身を見てみると……。

後に出版された『源氏供養』を読んでも思った事ですが、源氏物語が生まれてからこの方、沢山の訳者さんがいらっしゃいましたけれども、本当の意味で『源氏物語』を理解し、私に理解させたのは橋本治だけではないかと思います。
それくらいリアルに物語の中に入っていける。
光源氏の息が感じられる。
ただ古典をなぞった話ではなく、それを踏まえつつ全く新しい話としてまさに『窯変』させた物語です。
言葉遣いも口語で読み易い。

私はリアルタイムで出版されていた高校生の時に、図書館に購入希望を出して読みました(学生には高い買い物でしたので…)。
丁度古典の授業で源氏物語をやっていたのでかなり助かりました。
話の粗筋は知っていたのですが、古文を読んでもその訳文を読んでも「誰が何をどうしたいのか」が婉曲な表現で煙に巻かれ、今ひとつ雰囲気が掴めなかったのに、この本を読めば一目瞭然。
橋本治、この時代に生きてたんじゃないの?と思うくらい。
本当に天与の才だと思います。
妖しいお話が好きな方にもオススメ。

ひかる、わたくし
9人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 『窯変源氏物語』の主人公はまず、闇の中の光として生まれる。世を顰めさせるような父帝の私的な愛情から更衣腹に生まれ、「帝となると世を乱す」と占われ、源氏に下ろされる。当時の社会から見ると、彼はまったくの非嫡子である。後ろを振りかえると、支えとなり絆しともなる筈の母もいない。前後を闇に閉ざされて、ただ光るのは我が身の姿と才だけだ。自分を光りと讃える世は彼には愚かなだけで、この主人公は常に怒っている。
 それは、幼くして母をなくし、女であることで自分の才を育んだ父を継げず、中品の生まれであることで社会に対し一歩を譲らざるを得なかった紫式部自身の自画像と見ることは可能だ。そして、その「継ぐべき者」となれなかった孤独に共に心を震わしたところに、橋本治の資質はあるのだろう。
 互いに違和を感じた私とその周囲とのいずれが光で闇なのかは分らないが、この『窯変源氏物語』から現在書かれている『双調平家物語』を通って、いずれ作者自身の物語を私たちは読めるに違いない。
橋本治さんの力を見せつけられました。
15人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「源氏物語」の主人公は光源氏なはずなのに、光が当てられてきたのは長い間女性たち。それを源氏の一人語りとして蘇らせたのが『窯変源氏物語』です。

単なる現代語訳ではありません。平安時代という歴史的背景、ともに展開される美しい四季をそれはそれは細やかに、それ以上に細やかで緻密に描かれているのが人の心。源氏という男の<愛す/愛される>あるいは<愛せない>という根源的な苦悩が心理小説のように丁寧に描かれています(だから確かに量は多いし、すらすらとは読めないけれど)。だってこれ読んで誰に一番シンパシーを感じたかって、当の源氏にですもの。

「恨まなければならないほど、この身に縋りつくだけのいちいちを愛してはいない」(源氏のイメージ、変わりませんか?)

さらに宇治十帖では源氏は亡くなってるわけですから、紫式部が語るのですが、この流れがすごい。男の物語を経て、いつの間にか浮舟と紫式部が一体となって、一千年の時を超え私たちに語りかける女のメッセージ。千年の時間の中で、その身を燻らせ現れた源氏という男の「色」、『源氏物語』という物語の「色」は、『窯変源氏物語』でしか見ることはできないと思います。

装丁も綺麗ですね。ところどころに外国人をモデルにした写真がはさまれていたり、見出しにフランス語で一言入れられていたり。一帖ごとに、登場人物の人間関係の図が書かれているのも、大変ありがたいです。

おされ
9人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
源氏物語の現代語訳には、円地源氏、谷崎源氏、窪田源氏、瀬戸内源氏、与謝野源氏、デファクトともいえる田辺源氏、大和和紀のあさきゆめみしなど、決定版といえるものが多々あります。

それらの古いものは古文とかわらんでよ・・・
比較的新しいものはこなれた会話文になっていますが、現代語の小説として読むと、短歌や会話文に無理がありすぎ・・・

窯変は橋本氏が文豪になりたくて書いたものだそうで、良くも悪くも意欲作。意欲のあるものは評価せねば。そして、中身も悪くない。原典に忠実であることを旨としながら、橋本氏の分析に基づく解釈が挿入されている。「いずれのおんときにかにょうごこういあまたさぶらいたまいけるなかにいとやんごとなききわにはあらぬが」
って、冒頭からして、
「いつのことだったか、もう忘れてしまった―。」
って、やべー、やられてるよ・・・

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