釈迦 (新潮文庫)

新潮社 [文庫]
(2005-10)
EAN:9784101144382
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「釈迦 (新潮文庫)」のカスタマーレビュー

お釈迦様が身近に
6人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 
さすが瀬戸内寂聴さん。
釈迦十大弟子の一人、アーナンダーの視点から
仏教の知識のない私にも理解できるように
お釈迦様の生涯を描いてくれています。

この一冊で仏教がわかるとまでは言いませんが
数々の伝説に包まれて見えなかった
「人間・釈迦」が明らかになって
お釈迦様を身近に感じられる事ができるでしょう。

仏教教団の誕生の歴史も勉強になり
すばらしい作品です。
 
実践をともなう哲学
9人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
死を前にした最後の道行きの中でそれまでを回想するかたちでストーリーが進んでいく。
この本の中の釈迦は、決して完璧で絶対な存在者ではない。朽ちていく肉体と
弱さを兼ね備えたふつうの人間として描かれている。それでもなお、神聖視されている
存在であることを伺わせるのは侍者のアーナンダの接し方にある。このギャプが逆に 
釈迦の神秘性を強調している。
『仏教』とは、(よく口にされる)宗教に分類されるのだろうか?
『実践をともなう哲学』...これが 私にとっての『仏教』。この本は、そんな身勝手な
私の思い込みも裏切らない。
それでもこの世は美しい。
24人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
釈迦80歳にして最後の旅路。その共をしたアーナンダの回想と釈迦との旅路の会話を中心に物語は進む。

かって司馬氏が「空海の風景」を発表した時、一部から強い反発があった。他の聖人・神を人として描く時も然り。しかし瀬戸内氏はそんなハードルを(宗派の境も)飛び越え、「釈迦」と題した本を書いた。独自の仏教感・解釈・創造力がなければ出来ない事です。

事実、この世を生きた釈迦の人間としての姿も随所に描かれる。弟子の離反、受難、死別、様々な苦難に瀕しても尚説法を説き続けたのは「神」だからでは無い、「人よりも苦しみに耐える強さを身に付けていたから」。ウッパラヴァンナーら尼僧達の悲しい話等がアーナンダの回想を挟んでまるでアラビアンナイトを読んでいるように語られ、不可思議で読む者の心を捉えます。釈迦、アーナンダ二人の会話もある時は人間味に満ち愉しい。作者らしい。

中でも尼僧プラクリティ、釈迦の妻だったヤソーダーラーの死後の独白、恨み・愛・哀・すべて私には愛しくさえ感じた。これだから女人は往生出来ない、それでも良いではないか、こんなにも愛に餓える姿の何が罪でしょうか・・

釈迦はこの世をされば涅槃ニルヴァーナに入りもうこの世に輪廻する事も無い。苦しき穢土でしかないこの世との別れの言葉は簡潔にして深い。

「アーナンダよ、この世はこよなく美しい。」

生・老・病・死 すべての苦しみと煩悩に溢れたこの世の中、それでも人々の生き様はなんと愛しい事か、愚かであろうとも、人の命は力に溢れ、悩み、美しい。自分が生きたすべての世界と人と生物への限りない感謝と愛惜。釈迦が忌むべき現世を肯定し祝福したのだ、何と言う驚き。

ラストの入滅の描写も簡素であるが色が浮き上がってくるような美しい文章・・そして幕切れ。もちろん本書は宗教書では決してない、珠玉の文学作品であり、瀬戸内氏にしか表現出来ない素晴らしい読み物なのです。

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