瀬戸内さんの小説で一番好きなのは「夏の終り」ですが、
「場所」を読み終えた今は、どちらも甲乙つけがたい存在になってしまいました。
小説家は、年を重ねると、自分のルーツを探りたくなるのかもしれません。
この作品もそういった作品であると思いました。
瀬戸内文学の総決算という感触を受けました。
自分に関わる場所を訪れ、そこでの出来事を書きつつ、自分の思いを
書き記していくという形になっているのですが、その書き方が実に巧みです。
ルポルタージュに似せながら、瀬戸内さんの筆は飄々と進み、
それでいて書かれたものはまさに小説になっているという…
練熟の筆遣いです。
特に幼い日の思い出を描いた部分と、自分が関わってきた男たちについて描いた場面がすばらしいです。
人との出会いと別れの不思議、そして人との心のふれあいに、
人生の美しさと哀しさを感じました。
一生懸命、純粋に生き抜いた人だけがたどりつく境地だと思いました。

瀬戸内文学の総決算
生命力