木村元彦は事態は改善していないことを訴え、日本人がユーゴスラビア紛争を忘れないように本書を書いたのだろう。ただ、本書の内容の基本的な構図は『悪者見参』あたりで見られるものから変化していない。もちろん、コソボ独立に伴って起きたことは、クロアチア独立ともボスニア紛争とも違うだろう。しかし、読者から見ると役者が替わっただけの同じ芝居である。
こんな書き方をすると、渦中に居る人は芝居をやっている役者じゃなくて、命がかかっているのだと著者は怒るだろう。しかし、そのような場面に直面している人は、ユーゴスラビアだけでなく、ほかにも沢山いる。著者がユーゴへの思いと同じくらい、他地域への思いをもった人も居る。そこで、ユーゴに注目しつづけるべきだと説得するには、もう一つ何かがいる。
この手の民族紛争に国際社会が介入した例は数多い。ユーゴスラビア紛争と似た構図の例としてもキプロス紛争をすぐに思いつく。この辺と比較するなりなんなり、もう少し違う視点が欲しかった。すごくいい取材をしているとは思うのだが、路線の行き詰まりを強く感じた。

路線の行き詰まりを感じた
現地の様子が伝わってきます
丹念な取材