アンコールワットについて解説した本はたくさん出ていますが、この本はアンコール美術品の盗掘に焦点を当てている、非常に珍しい本です。
著者は、長くインドシナ半島の紛争を取材してきただけあって、この地域の背景知識が詳しい上、まさに歩いて取材しているので、内容的にも非常に興味深い本です。新書本ですが文章も大変読みやすく、一気に読んでしまいました。日本の大手百貨店のクメール美術品の展示即売会の体当たり取材などは、読んでいて痛快ですらありました。
しかし、そこには貴重な美術品の多くが欧米や日本などのアジアに流出しているという事実があります。
本書を読んでいると、アンコール遺跡の盗掘・密売を防ぐことがいかに難しいかがよくわかり、八方ふさがりの状態にやるせない気持ちになってきました。
この本を読んだ直後に、旅行でアンコールワットを訪れたのですが、ものすごい数の観光客に驚きました。アンコールではここ数年、観光客が急増しているそうで、大勢の観光客が写真を撮るためにあちこちによじ上ったり、遺跡に触ったりしていました。今後は盗掘だけでなく、押し寄せる観光客による遺跡のダメージ対策も考えなければならないのではないかと思いました。
数々の難題を抱える遺跡の保護ですが、まずは、少しでも多くの人が実情を知ることが第一歩だろうと思います。
アンコールワットに行った方・これから行かれる方には、とくに一読をお勧めしたい本です。

アンコールワットを訪れるなら、ぜひ一読を