夢の分析 (講談社選書メチエ)

川嵜 克哲
講談社 [単行本(ソフトカバー)]
(2005-01-08)
EAN:9784062583190
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「夢の分析 (講談社選書メチエ)」のカスタマーレビュー

ケインズの美人投票って
他の評者による評価がちょっと高すぎるような気がするのであえて星二つ。本当なら三つくらいが適当かもしれない。
著者の患者である、ある女性の夢の分析を通して近代というものが考察される。
一人の患者の長期にわたる夢が取り上げられていることは評価すべきだろう。だが気になるところもいくつかある。
一つとしては、どうも私には論証が不十分な気がした。夢を分析するために近代化に関するさまざまな文献が参照されるのだが、参照文献のコンテクストと夢の分析のコンテクストの擦り合わせが不十分で、いまいち理解できないところがあった。
もう一つに気になった点がある。柄谷行人の『日本近代文学の起源』を頻繁に参照しているのだが(それ自体は評価できるのだが)、柄谷からの長い引用の後では著者の地の文まで柄谷の文体に引きずられてしまっているような気がした。これは本書でいうところの、超越的なものと対面によって、それに飲み込まれる(包み込まれる)ということのパフォーマティヴな例証だろうか。
そして最後に、これが最も気になったところなのだが、「おわりに」におけるケインズの美人投票は適切なのだろうか。著者は有名なケインズの美人投票を引き合いに出して古代・近代・ポストモダンを説明している。著者はケインズの示した美人投票のあり方がポストモダンなものだとしているが、ケインズの美人投票は、株式市場をはじめとする市場というもののメタファーであり、むしろ近代的なものなのではにだろうか。
ケインズに詳しい方、是非このあたりのことを教えて欲しい。
具体的な分析
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この本ではある1人の例について具体的に分析を試みています。非常に具体的に丁寧に書いてあり、とてもわかりやすいです。しかしあくまである例について長期の分析が書かれているので、一般の人たちに同じ解釈が通用するかといえばそうではない点で、昨今はやりの夢占いなどとは全く異なると思います。夢に「これがでてきたからこう」と一概には言えない現実に気づかされる本でした。しかしそうは言っても多くの人に共通のキーワードもやはり存在するらしく、興味が高まりました。
夢分析を通して近代を考える
6人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私は最初この本を夢の分析に関する本として読み始めたわけですが、この本の中心的なテーマは、ズバリ近代論と言えます。模索の方向は古代とも近代ともポストモダンとも異なる意識のあり方を探る、ありていに言えば近代を超克する意識のありようについて夢の分析を通して考えること、と言えましょうか。この本で扱われるのは、著者がカウンセラーとして対応したシャーマン的な資質を持ったある女性(原因不明の頭痛に悩まされている)の一群の夢です。当初、古代的な意識を体現するタイプの夢を見ていたその女性は、カウンセリングを重ねるうちに、徐々に近代的意識を体現するタイプの夢を見るようになってきます。さらにカウンセリングを重ねていくと、彼女の夢は古代的なものと近代的なものとがお互いを排除せずに混然一体となったものとなり、その時点で彼女の頭痛は劇的に回復します。このような過程を、実際の夢の分析と、人類学や哲学の幅広い知識を織り交ぜながら解説していきます。臨床心理学が専門の著者ですが、非常に幅広い知識をお持ちです。扱っているテーマも今日的に重要なもので、なかなかに野心的な作品だと思いました。夢の分析からこのようなパースペクティブが得られるとは。おそらく、タイトルだけからはこのような内容は想像できないでしょう(講談社はもっと本のタイトルを工夫すべきだったような・・・)。
夢を生きる
5人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
夢分析と夢占いは別物である。本書はそのことを非常に分かりやすく示していると言える。確かに、夢占いの本には「○○は○○を表しています」などと書いてあり、何も考えずにすぐ分かる。しかし、そこで終わりである。
一方、夢分析はそうではない。本当の夢分析には多大な労力と時間が費やされるものだ。一つの夢に現れたイメージを何度も読み、感じ、そして生きる。また一連の夢を「物語」として読み、感じ、そして生きる。
そのような過程で、緩やかに理解が進んだり、突然腑に落ちる感じがするのである。
夢に興味がある方はもちろん、そのほか心というものに興味がある全ての方々にお薦めします。

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