「浄土」のカスタマーレビュー
ひらがなカタカナ漢字横文字の性質を知りつくし戯れる才能
町田の世界は、単純で瞬発的なパンクのエネルギーというより、ねちねちと執拗なラップの文体(すなわち精神)によってつくられている。「結婚式ゴルフ遊山旅行句会パーティ知り合いの引越し家具の配送などがあって」にみられる読点のなさはラップだろう。
どの短編もいいが傑出していたのは『どぶさらえ』だった。矢細、横安倍といった奇妙な名字が寓話のような効果を出しているし、「学がない癖に狡猾な田舎のキャバスケのような女」や「烏賊と酢とゴムを混ぜたような臭い」といった直喩の喚起力、「茶道的躊躇」「町会費滞納菩薩」という複合造語のもつ迫力は類まれな言語感覚の表出だ。この短編の最もイーポックメイキングなところは「ビバ、カッパ」という真新しい観念/心象風景のニーチェ的提示である。冒頭の3ページ半が「ビバ、カッパ」の説明に費やされていてそれ自体もう超アンビシャスなのだが、繰り返しや無駄は全くないし、ダレることもない。『どぶさらえ』はどんな話なのか、と聞かれれば、私は悟りの境地にいたる段階を主観と客観の間を軽やかに往復しながら描いたものだ、と答えるだろう。悟り境地に至ると「ビバ、カッパ」はViva! Kappa!となり魑魅魍魎が後をついてくる。どぶ川にこそ入ったことはないが橋を見上げた時のむこうとこっちを隔てている距離というのは経験したような気がするし、橋の上にいる者が空をみてしまう時の置いていかれたような感覚も身に覚えがある。身に覚えがあるのにその場その場でやりそごしてしまっている経験や、苦々しいけど発露せず心の中で燃えカスみたいになっている洞察をほりゃぁ!と眼前に突きつけるのが町田の流儀なのだろう。
う〜ん。やがて哀しきギャオスかな
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町田康はだーい好きである。作家としても歌唱家としてもだーい好きである。谷崎その他いろいろ授与されている町田さんですが、無冠のギャオスの話がだーい好きである。
だってバカだもん。だってパンクだもーん。
偉くなって、水道代やゼイキンがちゃんと払えるのは良い事だと思いますが、何気なく踏み越えてそのままいっちゃって欲しい町田康。いえ私にとっては町蔵。わがままな願いでしょうか?
らぶゆーまちぞー。世の中」くねくねでも充分美しかったり醜かったりします。でも生きていかなくてはならないので、やっぱり町田康は必要なのです。
岡田尊司『誇大自己症候群』(ちくま新書)のサブテキストとして
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短編小説集である。どれを読んでもあの町田ワールドを楽しめる。1.犬死、2.どぶさらえ、6.一言主の神 をベスト・トラックとして推したい。1.でのジョワンナ先生や、2.の「ビバ!カッパ!」といった決めのフレーズが、耳に心地よい(勿論、違和感もあるのだが、この座りの悪いところが町田康の独特の味わいだ)。
3.あぱぱ踊りや、7.自分の群像などは、岡田尊司の言うところの「誇大自己症候群」の症例報告として読むこともできる。あぱぱ踊りに出てくるガタロというのは、桂枝雀の「代書屋」が出所ではないだろうか。
5.ギャオスの話 が『文学界』初出でなく、『SFマガジン』掲載だったら読者に与えるインパクトはどうだったろうと変な想像を楽しませてもらった。
支離滅裂なのに、面白い。
4人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
町田康さんの本を読むのはこれで数冊めなんですが、相変わらずわけがわからない展開に、いつものごとく圧倒されてしまいました。
これ普通の人が書くと意味不明の何が言いたいのか理解不能の短編集なのですが、町田さんが書くと、なんとなく意味がわかり、なんとなく言いたいこともわかるような気がする、面白い短編集です。
ただ好みもあると思いますのですべての人に面白いというものではないと思いますが、我慢して読み進めていくときっと面白さがわかると思うので、ぜひ一読はしてもらいたい書です。
なんとなく理解しかかったぞー、と読んできたのですが、最後の「自分の群像」で、あえなくまたまた脳みそにしわをよせる意味不明短編。この作品だけはよく理解できなかった。さすが町田先生。ただでは終わらせない(笑)。
誰も町田さんを止められぬ
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これを読んで、町田氏の本領はやっぱり短~中編にあると思った。一話一話がタイトにまとまっており、バラエティに富んでいて、それぞれに教訓がある。もちろん、難しいことを考えなくとも、ページを捲ればマーチダワールドがそこここで炸裂しており、それだけで楽しめる。ジョワンナ先生って誰だよ?!とかひとりツッコミしちゃう。
「どぶさらえ」と「本音街」が特にお気に入り。ビバカッパ的心情の描写部分は秀逸だと思う。読了後は、町田氏のビバを叫びながら踊りたくなる。愉快痛快。大傑作です。