「打撃の神髄―榎本喜八伝」のカスタマーレビュー
狂人日記
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単純に本書を書き手の技量によって評価するならば、与えられる星の数は
一つか、せいぜい二つ。
脚色過剰、ただただ冗長、なおかつ、語彙貧弱にして推敲不足。
ただ一点、伝説の鬼才榎本喜八の肉声を記録した、そのことによって
価値を持つ一冊。
もし喜八の心境などを知りたいのならば、いっそ野球を離れて、例えば
ブレーズ・パスカルのテキストでも参照した方がよほど伝わるように思う。
それほどまでに、書き手の拙さが惜しまれる一冊。
道を究めた男
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榎本喜八は、なぜ神の域に到達できたのか、それが本書のテーマです。
若くして才能に恵まれた榎本はすぐに壁にぶつかります。
しかし一心不乱に素振りを続け、理解者の先輩に恵まれ、道場に通い研究を重ね、
ついに自然の力を無理なくバットの芯に伝える動作を身につけました。
まさに「天才は一日にして成らず」です。
しかし榎本と神との邂逅は一ヶ月に満たず、現役晩年の奇行を経て、
引退後は球界から距離を置くようになりました。
こうしたことから榎本を悲劇の天才ととらえがちですが、それは違うと思います。
完璧主義者・榎本が「自分は野球の頂点を極めた」と発言していること自体、
榎本が自己実現を達成した何よりの証左といえます。
完璧主義者の方、職人的な職業の方は、そんな榎本をどこか羨ましいと思ったはずです。
榎本の打撃理論を理解するために、合気道など関連分野の文献を消化し、
その身体論の実践も試みた筆者に頭が下がる思いですが、技術論は本書の主題ではないため、
もう少しコンパクトにまとめた方が良かったと思います。
何しろ合気道有段者の私ですら、技術的な部分は少し読み飛ばしたくらいですから、
やはり一般の読者には難しかったのではないでしょうか。
私には榎本が踏み入れた境地にはとてもたどり着けませんが、
肩の力を抜いて仕事に向かうことから始めようと思います。
神の領域を垣間見てしまった凡人の悲劇
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榎本喜八氏のことは、沢木耕太郎が書いた「さらば宝石」 で初めて知った。これは本人へのインタビュー
ができず周辺取材をまとめたもので、あくまで彼の特異なキャラクターとエキセントリックな部分に焦点を当
てたものだった。
むろん、本書の著者も例外ではなく、やはり榎本氏の特異なキャラクターや奇行の数々へ目がいく。た
だ、行きはするんだけど、榎本氏に奇矯な部分があるとわかった上でなおかつ「そもそも榎本氏が目指し
ていたものは何だったのか」「本当は何を言いたかったのか」ということに真摯に向き合い、その向き合った努
力の成果を、彼にかわって言葉として表現したのがこの本。
その真摯さは、著者の態度によくあらわれている。
著者は、榎本喜八氏と約2年間インタビューを続け、そして「かなり難しかった」という榎本氏の話を理解
するため、解剖学に始まり運動生理学や身体論、さらには武道・柔術の歴史までを勉強し、実際に脱
力法や呼吸法のトレーニングを6年間積んでさえいたとか。その努力は報われたといってよく、著者がその
理論を理解するまでの苦闘するプロセスと、榎本氏の求道の日々がシンクロされたかたちで、よく描かれて
ると思う。
魂が注入され、神の領域を垣間見るまでにいたるが、しかし、夢のような境地も怪我によりその感覚を
失ってしまう。そこからは、選手としても、一人の人間としても苦悩の連続で、やがて選手としての引退を
迎えてしまう。
榎本氏が活躍していた時代ではなく、ナンバ走りや甲野善紀氏の活躍がある現在だからこそ彼の合気
打法が表現できる素地があると言えようか。
読んで感じた榎本氏像は、貪欲でもなく俗ッ気も薄いのに悟りとは程遠い人と言うものだった。本来見て
はいけないものを見てしまったがためにその後の人生がそれにとり付かれてしまったと言う・・・。
打撃への求道者、こだわりという点で、現在の選手だと、広島の前田智徳選手がかろうじてその雰囲気
をもっていると思う。
榎本喜八伝
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榎本氏は,野球と合気道,まったく毛色が違って見えるものの融合によって打撃を極めた。これはすなわち,視野を広く持って様々なことを吸収しなければならないということか。あと,人間関係の大切さである。荒川氏との学生時代からのつながりが無ければ榎本氏は臍下丹田の考えに会うことはなかったかもしれないし,早く野球界を去り,忘れられた存在になっていたのかもしれない。今や神格化されている榎本氏の一流の打撃は,氏自身のたゆまぬ努力もさることながら,優れた人や考えとの貴重な出会いの末に生まれたものであった。それにしても,師の荒川氏も一流ならば,合気道の先生も一流。一流が一流を生み出す過程には,私のような凡人にはとても立ち入ることのできない奥深さを感じる。
なにごとも単独で成し遂げられるものではない。優れた成果は,いろいろなつながりがあってこそ達成されるものだと教えられるようである。
現在の野球界で希代の打者といえば,イチロー,松井秀喜あたりの名が浮かぶが,彼らがこの本で榎本氏の真髄に触れたとき,どの様な感想を抱くだろう。「わけがわからない」と言うだろうか。あるいは共感するのだろうか。
過去から掘り起こすべきもの
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榎本喜八という人物の存在は知っていた。日本球界屈指のアベレージヒッターであり、首位打者を2度獲得し、史上最年少で1000本安打を達成した屈指の天才であることは知っていた。世間で言うところの「奇行癖」も知っていた。
しかし、私の世代は実像は知らないのだ。
そりゃそうだろう。私は王・長島後のプロ野球しか知らないのだ。私が好きだったのは秋山幸二だけど、その後しか知らない。それ以前は基本的に活字でしか知らない。
他のレビューではイチローと重ねる向きがあるけれど、この本を読んだ限り想像するに、私は榎本のイメージに近い現役の選手は小笠原道大(日ハム→巨人)のように思う。お互い左打ちで守備位置はファーストだし、シャープなスイングで打球をかっ飛ばすタイプだ。イチローは榎本と違って生き様を含めて器用だ。器用すぎるといってもいい。
そして、そんな榎本が興味深い。
そういう意味では素晴らしい本だが、困ったことに合気道のくだりが非常に難しい。この部分を省くと榎本が追い求め、そして巡り会えたものが判らなくなるし、かといって、書いたら書いたらで難解だし(笑)。
でも、まあ、それだけ難しいことに取り組んでいたんだなぁ、と思う程度にとどめとけば面白いと思うし、私はその段階で踏みとどまることにした。ははは。