社会的に弱い存在である香子を伯母夫婦はいじめ、あるいは利用しようとします。異能を憎み、空虚に生きる香子が、その能力のおかげで多くの人の危機を回避し、不思議なつながりのある少女などと出会い、他者との関係を築いていきます。夢に怯え、過去に傷ついてきた自分と決別し、自分の価値を認められるようになる香子の姿に拍手を送りたくなりました。
序章で香子が見る極彩色の悪夢、次々と現れる予知がミステリアスな雰囲気を醸し出しています。日常の社会と非日常な能力を絡めた異色のミステリーです。そして、社会から孤立していたが普通の生活に入っていくことに喜びを感じる香子の心象が豊かに描かれています。他者に怯え、身を固くして生きている香子が、ショパンのノクターンを‘二重奏’するシーンの描写は、固さがほぐれるような温かさを感じます。心を動かされる作品です。


闇の奥に出口がポツンと見えても、なかなか近付いて来ない、長い長いトンネル