「失敗学のすすめ」のカスタマーレビュー
理屈より実績重視の実務家向け良書,内容は深く重厚
畑村氏の講演はこれまで何回か聴講しており(失敗学関連のお話),今さらと思いつつも手に取ったのが本書,もう少し早く読んでいた方がよかったと思ったのが実感です.失敗学の趣旨とは,失敗と上手に付き合うことを実利の伴うメリットまで高めることであり,失敗を肯定的にとらえることがポイントといえる.企業人としても,教育界にいる方にとっても大変役に立つ内容であり,失敗事例集は別途発刊されているにしても,その事例の豊富さには圧巻される.特に雪印(集団食中毒)とJCO(核物質取り扱いの臨界事故)のケースは生々しく感じた.一読することをお勧めしたい一冊である.
本書を読み進むうちに気付くこととして,経営学との共通点や(例えば,設計の思考過程のたどるらせん構造はCharles Fine のサプライチェーンデザインにおける二重らせん構造をイメージできる),心理学を重視した訓練失敗の提案などはセブン&アイの鈴木敏文氏の「商売は経済学で動くのではなく顧客の心理学で動く」を思い出す.失敗学は理屈とは異なる実学の部分を重視しており,まさに経営にかかわる実務家向けの発想に近いのかもしれない.一流の経営者の考え方は理屈では無く,実績として会社を継続し,成長させることが重視されるわけで,実学をベースとした発想が相通じるのかもしれない?
本書は一般向けの記述になってはいるが,特に理系の人が読み進めると意外にロジカルな組み立て方を感じることができるのではないか? 例えば,樹木構造を用いた要因分析(QCにおける特性要因図に近い)は非常に理解しやすい.
失敗は成功の始めりであることを示唆してくれる
様々な失敗例をあげ、失敗することがやがて成功につながることを示唆してくれる。
また、成功を維持するためには、「現地」「現人」「現物」を心がけるようにとあった。ようはよく見て、考えて、足を使って、しっかりと直接物事を向き合うということが大切だということだ。
失敗に対してニュートラルになる(若い人におすすめ、理由はレビューに簡単に記す)
いやぁ、これはよい本。失敗を見てみないふりをするのではなく、それに正面から向き合い多くのことを学ぶことを提唱している。面白いのは失敗ピラミッド。失敗にもレベルがあって、簡単なケアレスミスから組織の失敗、社会の失敗、そして未知との遭遇に至る。未知との遭遇などは新しい技術が使われ始めたときなどに起こる。そういう失敗は一定の確率で発生する。しかし、そうでない失敗は防ぐことができる。
また、失敗の経験は客観的なものでは説得力が欠けることが多い、例えば、家族とけんかをして苛立っていたということや、自分に対する過信などそういう背景が説明に加わることによって臨場感のあるものになる。
偽者のベテランと本物のベテランの話も面白い。山登りの下見という任務をこの二人に課したときに、偽者のベテランは山登りなんて簡単だと豪語する。本物のベテランは慣れていたとしても、ただ上るだけではなく、雨が降ったときはこの未知を通ろうと考えたり、こういう場合には途中で引き返そうと考えたりいろいろな場面を想像してそのときの対応を考えている。また、本物のベテランは経験だけではなく、自ら積極的に勉強をし、経験に加え知識を身につけている。
日本社会の構造に染まる前の若い時期にこの本を読んでおくとうまくこの本の影響力を自分の人生に生かせると思う。失敗に関してのネガティブなイメージが染み付いてしまった人がこの本を読んで自分の考えを根本から変えるのは難しいかもしれない。
失敗学は日本の組織に根付くのだろうか・・・
失敗学。提唱されてから随分と時間が経ちましたが、最近は先進的な企業だけではなく、
知識だけではなく、一部の企業では定着しつつあるようにも見受けられます。
「失敗学」といった用語を提案した本書を改めて手に取り、時代背景や諸問題に対する
失敗学の提起などを確認いたしました。そこからは本書が書かれた2000年
より、企業などの組織内での失敗に対する姿勢は変化が見られないことに愕然と
させられました。
私が確認したかったことは、果たして当時失敗学の中心の話題であった雪印食中毒
事件、JCOの臨界事故などから企業の姿勢は変わったのだろうかということです。
明らかなことは、組織の大失敗がそれが減るどころか、むしろ失敗の範囲は巨大化し、
より複雑・巧妙になり、そして結果として悪化しているということです。
最近でも、リチウムイオン電池の爆発事故、食品偽装などは話題に上ることも多く、
失敗の原因を追究し根本解決を考える試みはされているように思えません。どこに
責任があったのかを問い詰めて、その部分を切り捨てれば一件落着という姿勢。
喉もと過ぎればとはいいますが、明らかに疲弊しきっている組織には失敗学も単なる
一つのお題目でしかなかったのだろうと思います。
本書でも一部述べられていますが、失敗を忌み嫌う日本の風土に、失敗学を本当に
理解して根付かせるためのシステム作りを組織ははじめるべきなのかも知れません。
成功する原動力
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畑村さんの本を読むのは2冊目。
一貫した哲学があり、思いに共感を覚える。
失敗と聞くと、何となくマイナスイメージを
覚えてしまったが、失敗学は、実は成功学であるように思えた。
新しい分野へ挑戦し、失敗した場合は
それを繰り返さぬ様、分析・反省すること。
また具体的にご自身が失敗から学ぶ取ってきたことも
記述されたおり理解が深まる。
実は、この本よりも以前に図解中心の失敗学を読んだ。
内容は同じようなものであったが、こころに残った大きさは
本書の方が上である。
文章の持ちえる力を改めて認識するきっかけにもなった。