自然の生態系が崩壊しているという警鐘が盛んに鳴らされます。著者は、この生態系変動の問題を、自然と人間の中間にある里という環境から考えています。里とは、人間による攪乱の結果によってできた生態系です。農という人間の営みによって出現した生態環境が考えられています。
人が自然に手を入れたことで、多くの栽培植物ができました。しかし今、その栽培植物の多様な遺伝子が失われています。消費者の嗜好や経済性の追求のために、稲を代表とする多くの食用野菜が、一定の遺伝品種に淘汰されています。深刻な問題が指摘されます。
多様な遺伝子の収集保存を目的としている遺伝子バンクでも、他家受粉の種は、元の集団の遺伝的性質は残せないという原理的問題があり、保存の解決にならないそうです。
著者は、その遺伝子保護のために自生地保存を提唱し、自ら東南アジアで試みています。しかしタイでは失敗します。その保護区に人や水牛が入らなくなり、そこは自然遷移して雑草地化してしまったとのことです。
この経験から、著者は自生地保存には、農村・里の生活が重要な役割を果たすことを突き止めています。そして文化財としての遺伝子保護のために、ボランテアでもよいから、自然と人間との媒介を果たしてきた里の生活の再現を提案しています。
この里の復活と共に、山間地の焼畑、河川流域での洪水利用の重要さが述べられています。が、現代人が、そこまで戻れるのか些か疑問に思えます。しかし、昔のものが全てよいという事ではなく、ものが循環せずに一方向的に流れる生態系は長続きしないという著者の考えには、全面的に賛成です。
また我国では少しずれていますが、グローバリゼイションとは、文化多様性を認めた上で、しかし地球規模で考えざるおえない問に向かうことだと思います。この本は正にグローバルな環境生態論だと思いました。

自然との関係を正す道、自然の恵みを頂く里の生活を!