「民主主義」の歴史を振り返り、そこに共通する理論を考察し、今後の展望を考える。長谷川三千子「民主主義とは何なのか」を読みはじめたら、この本がかなり引用されていたので探して読んでみた。初版から30年経っているが、読めば驚くほど「まだ?」「また?」と思う記述が見出される。一度は真面目に「民主主義のなんたるか」を自分で考えてみようと思う方は手にとって損はない本だと思う。30年前の状況と現在を比較しながら読むのも興味深い。
例えば、討論と説得が難しくなった政党制の議会でも「論点を明確にし、責任のありかを問う」場としての価値はある、などと書かれている。確かにそういう位置づけもある、と思う。責任所在についてあまりにもあいまいな国会答弁を聞いていると、それも怪しくなっているきもするが。
終章「民主主義の展望のために」の数ページのなかに、著者の意見は集約されている。著者は、必ずしも「民主主義しかない」とは言っていないが、「民主主義に根本的な一つの特徴、ほかに求めがたい長所があるとすれば、それのみが、人間が政治生活を営むうえに、人間の尊厳と両立するという一点であります(p208)」という理由で支持する。ほぼすべての人間が「尊重されている」と感じ、権力をひっくり返す可能性のある要因が少ない状態に近づける考え方、という視点で、他の「主義」も各自、検討してみてもいいかもしれない。
過去の歴史の中での民主主義を振り返り、原理を検討してきた著者の結びの言葉を引用しておく。「求められているのは近代民主主義がどういうものであり、どういう特徴と困難とをもっているかの自覚であり、当面する諸問題を受けとることにおいてそれを解決に役立てる勇気であり、そのことを通じて民主主義の機構と作用領域とを組み直して行く叡智であろうと思います。(p207)」
岩波新書黄色版の1、という番号を付されているというのも、出版の意気込みが伝わってくるような一冊であった。まだ入手可能なのは嬉しい。

真面目で鋭い分析。岩波新書黄色版の1、という出版時の意気込みを感じる。